[書籍] シャーロック・ホームズの冒険:「ボヘミアの醜聞」
「ココの和訳が気になる!」、
「ココの原文が気になる!」
って箇所を抜粋してみました♪
両者にたいした差はないです。とにかく気になったところを原文込みで引用したかった、それだけだ!
+αで感想も少々。
和訳はこの6冊から。
- 〈角川文庫〉
- 〈光文社文庫〉
- 〈新潮文庫〉
- 〈偕成社〉 ※(上)(下)で分かれてますが便宜上1冊扱いとします。
- 〈河出書房新社〉
- 〈創元推理文庫〉



《参考》
原文で読むシャーロック・ホームズ
ざっくり感想&引用祭りは続きから↓
(ネタバレあり)
ココの和訳が気になる!
ホームズと恋愛
〈原文〉→サイト
All emotions, and that one particularly, were abhorrent to his cold, precise but admirably balanced mind.
(…)
for the trained reasoner to admit such intrusions into his own delicate and finely adjusted temperament was to introduce a distracting factor which might throw a doubt upon all his mental results.
●〈角川文庫〉 (P5)
すべての感情、なかでも恋愛感情は、ホームズの冷静かつ緻密でみごとにバランスのとれた精神に相容れないものなのだ。
(…略…)
熟練の推理家にとっては、綿密に調節された高感度の精神のなかにそんな異物が侵入してくると、自らの精神活動すべてに疑問を投げかける錯乱因子になりかねない。
●〈光文社文庫〉 (P11)
冷静で緻密、しかもみごとにつりあいのとれたホームズの心にとって、あらゆる感情は、なかでもとりわけ恋愛感情などは、いまわしいものなのである。
(…略…)
熟練の推理家にとって、微妙に調節された繊細な精神状態にこのような感情が進入するのを許すのは、その精神活動のすべてに疑いを投げかけるような、錯乱の要因を引き込むことになるのだ。
●〈新潮文庫〉 (P7)
あらゆる情緒、ことに愛情のごときは、冷静で的確、驚くばかり均斉のとれた彼の心性と、およそ相容れぬものなのだ。
(…略…)
訓練のゆき届いた推理家にとって、細心に整頓されたデリケートな心境のなかに、そうした闖入者を許すのは、まぎれをおこさせるものであり、その精神的成果のうえに、一抹の疑念を投ずることにもなるのである。
●〈偕成社〉 (P7)(上)
人間のあらゆる感情、とくに恋心などというものは、ホームズにはじゃまなだけだ。冷静で、完全につりあいのとれている心にとって、そういうものは受けいれることはできないのだ。
(…略…)
訓練された推理家にはじゃまものだ。複雑でデリケートに調節された心に、そんな感情がはいりこめば、混乱がおきて、正確なはたらきもできなくなってしまう。
●〈河出書房新社〉 (P15)
すべての感情、なかでも恋愛感情は、冷静で物事に厳しく、しかも見事なまでにバランスのとれたホームズの精神にとっては、まったくじゃまなものなのだった。
(…略…)
頭がよく訓練された推理家にとっては、きめこまかく整理されている心の中に恋愛感情が入ってくると、心の状態が狂って、混乱してしまうのである。
●〈創元推理文庫〉 (P8)
どんな感情も――なかでもそういう恋愛感情などといったものはとりわけそうだが――彼のように冷静かつ厳密、そのくせみごとにバランスのとれた精神構造の主にとっては、たんにおぞましいものでしかないのだ。
(…略…)
熟練した推理家にとっては、かかる夾雑物を自らのデリケートな、精緻に調整された気質のなかに混入させることは、すなわち、精神力を散漫にさせるひとつの要因であって、ひいては、その精神活動から得られた結果のすべてを疑わしいものにしてしまうらしい。
非常に興味深い箇所です。
〈角川文庫〉がスッキリしていて好きです!
〈新潮文庫〉の「闖入者」、〈創元推理文庫〉の「夾雑物」ってことばにはニンマリしました。なかなか日常で見かけないよこの日本語。油断してたー。なんかワクワクする。
しかし嗚呼ホームズ、君という人は、尋常じゃなく面白いのだから!
鉄壁の難攻不落の絶対防御というわけですか、そこんとこ、どうなんですか。
"あの女性"
〈原文〉→サイト
it is always under the honourable title of the woman.
●〈角川文庫〉 (P43)
いつでも敬意をこめて、「あの女」という呼称を使うのだ。
●〈光文社文庫〉 (P54)
必ず「あの女性」という敬称を使うのである。
●〈新潮文庫〉 (P47)
必ず「あの女」という尊称をもってするようになったのである。
●〈偕成社〉 (P66)(上)
いつも〈あの女性〉という呼びかたをするのである。
●〈河出書房新社〉 (P54)
いつでも「あの女」という、敬意を表する表現を使っているのだ。
●〈創元推理文庫〉 (P52)
つねに彼女には"あの女性"なる敬称が冠せられるのである。
ラストを飾る一文!
固有名詞で呼ばないところがすごいです。全女性代表!
特別な感情を抱きながら、もう永遠に会うことはなく、思い出の中だけに生きる人。
安易には名前を呼べない気がする。敬意というか、畏敬?単純に照れもあったりする!?
〈河出書房新社〉はそのままだと「アノオンナ」なんだけどいいの!?
「女」/「女性」は「ひと」と読ませてお願い、〈角川文庫〉〈光文社文庫〉〈新潮文庫〉のように。
あ、心の目で好きに読めと・・・!?
「アノオンナ」だとなんか、名前を口にするのもいまいましいのかなと思っちゃってなぁ;
ココの原文が気になる!
法に触れてもかまわない!
〈原文〉→サイト
“(…)Doctor, I shall want your cooperation.”
“I shall be delighted.”
“You don’t mind breaking the law?”
“Not in the least.”
“Nor running a chance of arrest?”
“Not in a good cause.”
“Oh, the cause is excellent!”
“Then I am your man.”
“I was sure that I might rely on you.”
〈角川文庫〉(P28)
「(…略…)ワトスン先生、きみの協力がほしい」
「いいとも」
「法に触れるかもしれないが?」
「かまわない」
「逮捕されるかもしれなくても?」
「意義のあることならかまわない」
「意義なら十分にあるさ!」
「じゃあ、ホームズのいうとおりにするよ」
「そういってくれると思ってた」
ワ、ワトソン君!!自分が何言ってるか分かってるのか!?(笑)
法に触れるのも逮捕されるのも厭わない、だと!?すごすぎるよ!!もう反射的に答えてるじゃないですか、かぶせる勢いすら感じるよ。というか、いいの本当に!?覚悟ができてるところはすがすがしいけど、奥さんが聞いたら何て言うかね!?
"I am your man." って、なんだかすごく、命を預けてる感じがして、ふたりの厚い友情を見せつけられてもうお腹いっぱいです。
変装名人ホームズ
〈原文〉→サイト
The stage lost a fine actor, even as science lost an acute reasoner, when he became a specialist in crime.
〈角川文庫〉(P30)
ホームズが犯罪を追う探偵になったおかげで、科学界は鋭敏な理論家を失ったが、演劇界もまた名優を失ったといえるだろう。
ホームズのこと大絶賛!
こういう対になってる文章っていいですね、なんか。
変装サプライズを一度でももらってしまうと、ちょっとでも怪しい人を見たら「こいつ、さてはホームズ…!?」って目で見ちゃうだろうなぁ。「親友の目はごまかせないぞ、ホームズ( ゚∀゚ )♪」と満面の笑みで肩を叩いたら、まったくの人違い…なんてことをやらかしてないかね、ワトソン君よ?
ざっくり感想
それまで女を小馬鹿にしていたホームズを変えた、聡明な「あの女性」のお話。
それまで小馬鹿にしていた女という生き物にまんまとしてやられた、聡明なホームズのお話。
美人っていうのも当然重要な要素だろうな。
ホームズは調和の取れた美しいものが好きだろうから。
ワトソン君は健全ないち紳士として美人が好きだろうから。え、そんなことない?顔じゃなくて知性が大事?ごめんワトソン君。
いや、見た目は重要です( ー`дー´)! 知性や内面が見た目に現れるから美人なんでしょ!
善良な美人をだます罪悪感 << ホームズとの約束
なワトソン君にもクスッ(´∀`*) え?すごく悩んだ末の決断だって?ごめんごめんワトソン君(笑)
それから、結びの余韻が印象的だなぁと思いました。
ホームズ、まれに小悪党に出し抜かれた時なんかは、ストレートに怒りを露わにしているのに、アイリーン・アドラーの場合はその描写がないなと思って。まあ彼女は悪人ではないけどさ、「女に負けた…!この僕が…女に…悔しいっ!!!!!」って少なくとも心の中では爆発したはず。
悔しいのと、それに勝るとも劣らない尊敬と、「女は馬鹿である」っていうロジックの書き換えと、素直な反省と?
一度負けを認めたら、彼女が賢ければ賢いほど救われるよね。
とはいえ、記念に写真をもらったのは戒めでもあるかもしれない。
どんな心境だったのかなぁ?
ワトソン君としては、ホームズがアイリーンに恋をした可能性を信じたい節もあったのかなぁ。冒頭で、ホームズは恋愛との親和性ゼロで云々と書いてるけど、「そんなホームズでも彼女になら恋しても不思議はない、それくらいすごい女性がいたんですよ皆さん!!」って。
ホームズに誰かを恋してほしいようなほしくないような、私もそこは複雑な思いです。いや、しなくていいか・・・うん、しなくていい!そんなことはわれわれ一般ピーポーに任せとけ!
以上♪
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