[書籍] 豊臣秀長―ある補佐役の生涯
兄・秀吉を終生支え続けた豊臣秀長という人の話。
「梢が高こう茂れば根も深こう拡がらにゃなるまい」
歴史の表舞台を突き進む兄のため、見事にしんがりを務めた弟
豊臣秀長・・・って誰!!
これが私の第一印象でした。
でも、それこそが、秀長の望むところ。
兄・秀吉の「補佐役」に徹し、自分の名を残さないように努めた。
兄とは対照的に、温厚で地味な性格の秀長。
百姓として比較的安定した将来が約束されていたのに、その暮らしを捨て、ギャンブルな道に身を投じることになる。
秀長から見た兄・秀吉は、
恐ろしく頭がよく活動的で努力家で驚くほどに大胆だ。人心収攬の術と機を見るに敏な感覚でも卓抜している。
とにかくすごい。逆立ちしたってかなわない。
でも、
内には刃物のような繊細さを持ちながら、外には豪放磊落を装う
こんな面もあり、危なっかしいところもある。
そんな兄を生涯支えてゆこうと決めた秀長。常に前だけを見て全力疾走する兄だ、自分がいないと転んでしまうかもしれない。そして、実際その決断に忠実に生きる。
この弟がいたからこそ、秀吉は安心して天下街道を爆進できたんだなぁと思える。
兄弟で争うことが珍しくなかった時代に、「兄の出世こそが俺の望みだ」なんて本心で言えるかな。
理不尽なこと、無茶ぶり、たくさんあっただろうし、苦労は絶えなかったと思う。
でも、不満をぐっと呑み込み、分をわきまえる。あくまで兄を主役として立て続け、また、その有能さを尊敬した。誰もやりたがらない仕事を進んで引き受けた。「俺だってけっこう頑張ってるよ!もっと俺を評価して!俺も偉くなりたい!」なんておくびにも出さない。そんなこと、考えもしない。
貧しい農民として育った秀長。読み書きなどのあらゆる所作をどれだけ苦労して覚えたのか。
達筆だったっていうんだから立派。
それに、苦情処理や仲裁などの調整力に長けていたという。
いろんな軋轢をこの人が吸収してくれてたんだろうなぁ。
この人は、自らの功績を伝える記録も残そうとしなかったし、
(中略)
すべてを兄・秀吉の築いたきらびやかな政権に埋め込んで逝ったのである。
かっこいい・・・!!なんてかっこいいのか!!すごいよ秀長さん!!
あとがき的なもの
信長のすさまじさも描かれてましたね。合理主義。コスト概念。
ロマンというよりは実際的?現実的というか、著者が経済のひとだからですか。おもしろいほど女っ気がなかったですね。いつのまにか結婚してたり、いつのまにか養女がいたり。当然出てくるだろうと思ったねねやお市の方はほとんど触れられてません。まあ、それはそれで全然いいですが。むしろ歓迎です。
できれば固有名詞にもっとルビが振られていると助かったなぁ。読めないんだこれが!それくらい知ってるよって人向けなんだとしたら、私のレベルが追いついてませんでしたね。地図が欲しいなとも思いました。
最後に、解説より。
「補佐役」というのは、参謀でも、中間管理職でも、ましてや次のナンバー1でもない。
補佐役の仕事とは、ナンバー1と同体化することである。そしてそれを自分の天命と考え、そのことにほこりをもつ存在である。
▼こちらは1冊にまとまってますね。
以上♪
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