[書籍] 不思議の国のアリス(角川文庫/河合祥一郎訳)
アリスを久しぶりに再読。
どんな話だったかおさらいしつつ、言葉遊びに着目しつつ。
訳が素晴らしいと思いました!!
荒唐無稽でナンセンスな話を、原文を知らずとも日本語単体で楽しめるよう工夫が凝らされていて、訳者さんの汗とセンスの賜物ではないかと感じました。
とはいえ思わず原文も確認しましたが(ごく一部)。
実はあまり期待してなかったのです。訳者や出版社がどうこうではなく、「不思議の国のアリス」という物語自体に。
アリスは原文の英語による言葉遊びが肝だろうから、つまるところ原文を理解して読まないと面白さは分からないんだ、とどこかで聞きかじった知識の寄せ集めで、勝手にそう思い込んでました。どんな話でどんなキャラクターが出てきたか細かい部分を忘れているので、それらを思い出す程度にざっとおさらいできればいいや、その程度の期待度で臨みました。
だって、子どもの頃に読んだ時、まったくの意味不明さに混乱しましたもんね。ユニークで楽しいキャラクターや興味深いモチーフがたくさん出てくるので、いちいち面白くて惹かれはするんですよ。でも、いくらウサギやチェシャ猫が可愛くたって、「全部アリスの夢でした、以上!」って、そりゃないだろうと。夢なら何でもありじゃないかと。
アリスの物語は展開がしっちゃかめっちゃかで正直ついてゆけない。ただし、キャラクターは個性的でとても気になる。ずっとそのような認識でした。
ところが、この角川文庫は、言葉遊びの面白さに興味を持てればこんなに楽しめるのか、と気付かせてくれました。
訳者あとがきによれば、
日本人の口に合うように味付けしてくれた感じで、「うまいこと言う!」と膝を打つポイント続出。
見事だと思ったのは、例えば序盤のネズミのしっぽのくだり。
原文:https://sites.google.com/site/aliceinoriginal/03
tale(話)を tail(尾)とアリスが勘違いするのが面白いくだりです。
そのまま訳すと、「これから長くて悲しい話をするよ」→「確かに長い尾だ」では意味が分かりません。
でも、はじめに「尾を引いている」と加えることで、その直後の「長い」という単語と「尾」とをアリスが結び付けて「確かに長い尾だ」と発言する、というとても自然で納得のゆく流れになっていて、それがすごいと思いました。
ネズミ「尾を引いている云々」 → アリスの関心が「尾」に向く
ネズミ「長くて悲しいよ」 → アリスが「尾」と「長い」を結び付ける
アリス「ほんと、長い尾だわ」 → しかし「長い尾」は分かるが「悲しい尾」は分からない
アリス「どうして悲しい尾なの?」
(「尾を引い【ている】」なんつって・・・)
そしてとどめに「《尾話》」なんていう上手い表現。山田くん、座布団10枚差し上げて!
他の訳と読み比べてみたくなります。
自分が初めて触れた時のアリスの本は、おそらく言葉遊びの部分がちゃんと訳されていなかったか、もしくは私が理解できなかったか、どちらかなのでしょう。確か子ども向けの本だったので、もしかしたら省略されていた可能性も。そうでなければ、やっぱりもうちょっと興味を引いていてしかるべき。自分でも当時思ったのです。いかにも自分が好きそうな匂いがプンプンするのに、いまひとつのめり込めないのはなぜだろうかと。
最初に良い訳に出会えるかどうかって、その後の人生を左右するんだなぁ。(大げさかな?)
ジョン・テニエルの挿絵がいくつも載っています。アリスと言ったらこの絵。昔年賀状にアリスのウサギを描いたことがあったなぁ。アリスの顔はいつ見ても怖いけど。顔だけ真顔っていうか、幼児体型で顔は大人っていうか(笑)でも、素敵です。いつか消しはんで彫りたい!
それにしてもこのアリスって子の性格、怖いもの知らずで小生意気でこまっしゃくれてて、どうもいけすかないなぁ(笑)
「鏡の国のアリス」も近いうちおさらいしようと思います。ハンプティ・ダンプティに会いたい。
以上♪
どんな話だったかおさらいしつつ、言葉遊びに着目しつつ。
![]() | 不思議の国のアリス (角川文庫) ルイス・キャロル 河合 祥一郎 角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-02-25 by G-Tools |
訳が素晴らしいと思いました!!
荒唐無稽でナンセンスな話を、原文を知らずとも日本語単体で楽しめるよう工夫が凝らされていて、訳者さんの汗とセンスの賜物ではないかと感じました。
とはいえ思わず原文も確認しましたが(ごく一部)。
キャラは魅力的だが話がナンセンスでいかんともしがたい、それがアリス
実はあまり期待してなかったのです。訳者や出版社がどうこうではなく、「不思議の国のアリス」という物語自体に。
アリスは原文の英語による言葉遊びが肝だろうから、つまるところ原文を理解して読まないと面白さは分からないんだ、とどこかで聞きかじった知識の寄せ集めで、勝手にそう思い込んでました。どんな話でどんなキャラクターが出てきたか細かい部分を忘れているので、それらを思い出す程度にざっとおさらいできればいいや、その程度の期待度で臨みました。
だって、子どもの頃に読んだ時、まったくの意味不明さに混乱しましたもんね。ユニークで楽しいキャラクターや興味深いモチーフがたくさん出てくるので、いちいち面白くて惹かれはするんですよ。でも、いくらウサギやチェシャ猫が可愛くたって、「全部アリスの夢でした、以上!」って、そりゃないだろうと。夢なら何でもありじゃないかと。
アリスの物語は展開がしっちゃかめっちゃかで正直ついてゆけない。ただし、キャラクターは個性的でとても気になる。ずっとそのような認識でした。
言葉遊びの訳の巧拙が要
ところが、この角川文庫は、言葉遊びの面白さに興味を持てればこんなに楽しめるのか、と気付かせてくれました。
訳者あとがきによれば、
この翻訳では洒落のみならず、詩のライム(脚韻)に至るまで、その楽しさがわかるように訳出を試みました。それがこの翻訳の画期的なところだと自負しています。ということですから、そうなのでしょう。
日本人の口に合うように味付けしてくれた感じで、「うまいこと言う!」と膝を打つポイント続出。
見事だと思ったのは、例えば序盤のネズミのしっぽのくだり。
原文:https://sites.google.com/site/aliceinoriginal/03
“Mine is a long and a sad tale!” said the Mouse, turning to Alice, and sighing.
“It is a long tail, certainly,” said Alice, looking down with wonder at the Mouse’s tail; “but why do you call it sad?” And she kept on puzzling about it while the Mouse was speaking, so that her idea of the tale was something like this:—
「では、いまだに尾を引いているいざこざがどう起こったのか、お話をしよう。長くて悲しいよ、こいつは!」とネズミは言い、アリスのほうを向いてため息をつきました。
「ほんと、長い尾だわ。」アリスはネズミのしっぽをほれぼれと見おろしながら言いました。「でも、どうして悲しい尾なの?」アリスはネズミが話しているあいだ、このことでずっと頭をなやませていたため、ネズミの《尾話》はこんなふうに感じられました――。
tale(話)を tail(尾)とアリスが勘違いするのが面白いくだりです。
そのまま訳すと、「これから長くて悲しい話をするよ」→「確かに長い尾だ」では意味が分かりません。
でも、はじめに「尾を引いている」と加えることで、その直後の「長い」という単語と「尾」とをアリスが結び付けて「確かに長い尾だ」と発言する、というとても自然で納得のゆく流れになっていて、それがすごいと思いました。
ネズミ「尾を引いている云々」 → アリスの関心が「尾」に向く
ネズミ「長くて悲しいよ」 → アリスが「尾」と「長い」を結び付ける
アリス「ほんと、長い尾だわ」 → しかし「長い尾」は分かるが「悲しい尾」は分からない
アリス「どうして悲しい尾なの?」
(「尾を引い【ている】」なんつって・・・)
そしてとどめに「《尾話》」なんていう上手い表現。山田くん、座布団10枚差し上げて!
他の訳と読み比べてみたくなります。
自分が初めて触れた時のアリスの本は、おそらく言葉遊びの部分がちゃんと訳されていなかったか、もしくは私が理解できなかったか、どちらかなのでしょう。確か子ども向けの本だったので、もしかしたら省略されていた可能性も。そうでなければ、やっぱりもうちょっと興味を引いていてしかるべき。自分でも当時思ったのです。いかにも自分が好きそうな匂いがプンプンするのに、いまひとつのめり込めないのはなぜだろうかと。
最初に良い訳に出会えるかどうかって、その後の人生を左右するんだなぁ。(大げさかな?)
ジョン・テニエルの素晴らしい挿絵
ジョン・テニエルの挿絵がいくつも載っています。アリスと言ったらこの絵。昔年賀状にアリスのウサギを描いたことがあったなぁ。アリスの顔はいつ見ても怖いけど。顔だけ真顔っていうか、幼児体型で顔は大人っていうか(笑)でも、素敵です。いつか消しはんで彫りたい!
それにしてもこのアリスって子の性格、怖いもの知らずで小生意気でこまっしゃくれてて、どうもいけすかないなぁ(笑)
「鏡の国のアリス」も近いうちおさらいしようと思います。ハンプティ・ダンプティに会いたい。
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以上♪
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